第32話 天罰てき面

天罰てき面 孫たちがわが家にたびたびやってくる。子供達のエネルギーはすさまじいものだ。なにせ「移動」は常に「走り」だし、いつも汗をぶったらしている。私も子どもの頃から学生時代まで、お袋によくこう言われてはあきれられたものだ。「エネルギー余っ…

第31話 床屋さんで暴れた話

床屋さんで暴れた話 小学校を卒業するまで「やろっ子」の髪型は二種類しかなかった。「坊主頭」か「坊ちゃん刈り」だ。私は「町の子」だったので「坊ちゃん刈り」だった。思い出アルバムを開いたら、白衣の床屋さんが写っていた。小学校に入る頃かな〜 その…

第30話 山の優劣

山の優劣 東京のある大学に入ったが一年もしないうちにやめてしまった。その頃若気の至りで小難しい本にかぶれ不眠症気味だった私は、東京という大都会になじめず孤独感にさいなまれていた。そのせいか、朝から晩まで数年前から病みつきとなっていた「山登り…

第29話 駐在さんと息子

駐在さんと息子 私が小学生のころ、お寺の隣に「駐在所」があった。シブヤ巡査が一家で引っ越してきたのは、私が小学校五年生の時だった。小太りでオッチョコチョイな感じのシブヤ巡査、大太りの奥さん、そして一風変わった一人息子の三人家族だった。 風変…

第28話 ハンクローの写真

ハンクローの写真 『思い出アルバム』には、母犬「チビ」とその子「ハンクロー」がたわむれている写真がある。とっても可愛い子犬だった。母親の「チビ」は白い雑種の犬だったが、小学生だった私は「チビ」はけっこう気品があると思っていた。 しかし「チビ…

第27話 イズミ君の情熱

イズミ君の情熱 小学校では、学年一の秀才は「イズミ君」だった。三つの小学校が統合された中学校でもやっぱり成績は一番だった。高校は県で一番入試が難しい学校に入った。ところが、高校へ入学した年に彼は急逝してしまったのだ・・・四十二歳で亡くなった…

第26話 知恵ある友

『徒然草』にはこんな文章がありました。「良き友に三つあり。物くるる友、医師(くすし)、知恵ある友」。「知恵ある友」という言葉で夭逝した親友のことを思いだします。 (松本竣介の絶筆となった作品に寄せた舟越保武の「追悼文」) →一番美しい追悼文 …

第25話 忍者犬「チビ」

忍者犬「チビ」 懐かしい子供時代を一緒に過ごしたのは家族や友達だけではない。小学校二年生の秋、そぼふる雨の日に「チビ」はわが家の庭先に迷い込んできた。スピッツとチンのあいの子のような「チビ」はそのままわが家に居着くことになった。体が特別小さ…

第24話 青鬼のお面

青鬼のお面 小学校一年生の学芸会は私が主役だった。『猫と鈴』の猫役で、私は子供ながら大いにプライドを満足させたものだ。ところが翌年、小学校二年生の学芸会では「真っ逆さま」になってしまった。学年の劇担当で担任の久美子先生は、私に主役とは正反対…

第23話 天国の食べもの

天国の食べもの 『思い出アルバム』は、どういうわけか私の青春時代のページが開いている。私が二十四歳ころだな、これは。この時代の写真には、ペーペー社会人で、少々お疲れ気味の私が写っている。 雪ふりの寒い夜だった。夜十一頃だったかな〜。山形から…