第18話 「ミイラ」と「きのこ」

「ミイラ」と「きのこ」


 テレビがついにやって来た!!!小学校二年生のときだったかな?思い出の番組は?となれば、私たちの世代なら必ずこれだ。「恐怖のミイラ」毎週火曜日の夜七時半からそれは始まった。寝る前の三十分間、たぶんその時間帯、子供のいる家庭はどこも「し〜ん」としていたはずだ。声が出なかったのだ。怖くて。


 「ワワワ〜ッワッ〜〜〜ワワワ〜ッワッ・・・」の低音のハミング。暗闇から歩いてくる包帯を巻いた男。私たちの方へどんどん近づいてくる・・・(怖いよ〜)!!!!!!!!だれもが鮮明に覚えているのは、このオープニングだ。次の日は布団を干す親も大変だったことだろう。


 小学校最後の恐怖体験をもうひとつ書いておこう。これも私たちオヤジたちの伝説の恐怖映画だ。「マタンゴ」*******(知ってるよね?絶対。同世代の皆さん)


 この映画を語る前にもう一本語るべき映画がある。小学校五年生のときだったかな? 市川崑監督の幻の名作記録映画「東京オリンピック」を学年全員が映画館で観せてもらったのだ。


 この映画は一般的な記録映画ではなく芸術記録映画とでも言えるユニークなものだった。ところが、あまりのユニークさに眉をひそめた有力政治家からいちゃもんをつけられ、その後この映画はカルト的作品としてお蔵に入ってしまった。


 実はその映画と二本立てで「マタンゴ」も上映されており、ついでにそれも観せてもらったのだった。先生たちも内容は知らなかったんだろうな、たぶん。


 この映画は、都内の精神病院に収容されている青年が語る回想録である。ある日、豪華ヨット「あほうどり号」で海に繰り出した七人の若い男女が遭難し、無人島に漂着した。そこは、カビと不気味なキノコに覆われた孤島であった。


 唯一見つかった難破船には、少数の食料が残されていたものの生存者はおらず、「船員が日々消えていく」といった内容の日誌と「キノコを食べるな」という旨の警告が残っていた。


 やがて、七人が食料と女性を奪い合い対立する飢餓と不和の極限状態が訪れると共に、島の奥からは不気味な怪物が出没し始める。そして一人、また一人と禁断のキノコに手を出していく。


 これも実に怖かった。と同時に「とってもエロチックだったな〜」と、今でも同級生たちで語り合っている。怖いのとエロチックは相性がいいのだろうか? まるで肉料理と胡椒のようだ。


 小学生時代に観たこれらの名作?ホラーは、どうも私の「原体験」になったようだ。高校の文化祭ではトイレットペーパーを体にぐるぐる巻きにして、「恐怖のミイラ」に自らがなりきって仮装行列をしたものだ。ミイラ捕りがミイラになったんだな。たぶん・・・