第28話 ハンクローの写真

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ハンクローの写真


 『思い出アルバム』には、母犬「チビ」とその子「ハンクロー」がたわむれている写真がある。とっても可愛い子犬だった。母親の「チビ」は白い雑種の犬だったが、小学生だった私は「チビ」はけっこう気品があると思っていた。


 しかし「チビ」はダメンズ・ウォーカーのようだった。人間と同じで、可愛い犬はどうもダメ犬の粘り強さに負けてしまうようだ。私が追い出しても追い出しても性懲りもなく通ってくる足の短い黒い野良犬と、ついにデキてしまったのだ!


 そして、生まれた子犬が「ハンクロー」だ。母親から半分、父親から半分それぞれ色が遺伝した。半分白くて、半分黒いぶち犬だった。なので、私は「ハンクロー(半黒)」と名付けたのだ。私の足にじゃれついてとっても可愛い子犬だった。


 ある日、可愛いハンクローを見た人から、ぜひ譲ってくれないかと強く願われた。別れはつらかったが、ハンクローの幸せを考えてその人にあげることにした。ハンクローの里親はけっこう離れた町の人だった。

 
 それから一年以上も過ぎたある日、ハンクローの里親から手紙が届いた。中には、ハンクローの写真が入っていた。びっくりした! ハンクローからは母犬の面影がすっかり消え、あの父犬そっくりの顔つきと体型になっていた・・・


 私は里親をだましてしまったような気がした。チビにも写真を見せた。チビもきっとわが子とは気づかなかったことだろう。私はけっこう落胆していた。よく見ると、写真の後ろに何か書かれているのに気づいた。


 そこにはこう書かれていた。「元気に暮らしていますよ」私はとてもホッとした。飼い主さんの温かい笑顔が目に浮かんだ。そして、もういちどハンクローの写真を一緒に見ながら、チビをやさしくさすってあげた。