第22話 骨付きのビフテキ

骨付きのビフテキ 花の小学校一年生、季節は秋、十月下旬だったな。今でもその日の様子を鮮明に思い出す。しかし、その晩から約一週間まったく記憶がない。死線をさまよっていたからだ。 秋のその夜、八時頃だったな。私は居間の四畳半の襖に背中を付けて柿…

第21話 恥ずかしい「きもだめし」

恥ずかしい「きもだめし」 子供時代の通過儀礼は数々あった。夏休み「お盆」の頃の「きもだめし」もそのひとつ。 小学校時代の夏休み、「夏休み帳」はじめ「自由研究」など、宿題はけっこうあった。地区ごとに縦割りの子供会が組織され、毎日午前中は各家庭…

第20話 弘法の秘密

弘法の秘密 小学校三年生の私は字がとても下手だった。どうしてなのか、角度が右に行ったり左に行ったり定まらない。まるで酔っ払いの千鳥足だ。そしてこんなことを思う。(きっと俺がよく似ていると言われる、あの大酒飲みのテツおんちゃんに本当に似ている…

第19話 「タイム」にゃまいった!

「タイム」にゃまいった! 昭和の頃は町に何でも見てくれる開業医が数軒あって、とてもよかったなと懐かしく思い出す。昭和30年代は衛生状態もそういいわけじゃないし、遊びも野蛮だったので病気やけがも多かった。そして、どんな病気やけがでも「町医者」…

第18話 「ミイラ」と「きのこ」

「ミイラ」と「きのこ」 テレビがついにやって来た!!!小学校二年生のときだったかな?思い出の番組は?となれば、私たちの世代なら必ずこれだ。「恐怖のミイラ」毎週火曜日の夜七時半からそれは始まった。寝る前の三十分間、たぶんその時間帯、子供のいる…

第17話 自転車に乗れた日

自転車に乗れた日 今になってあの頃の遊び場を見ると、どこもかしこも、なんて狭かったんだろう!とびっくりしてしまう。でも小さな子供たちにとっては、たった数十メートルの路地でも、まるで滑走路のような長さに感じられたものだ。 小学校二年生のときだ…

第16話 腰抜けビーチボーイズ

腰抜けビーチボーイズ 本当に「腰がぬけた」というお話である。毎年夏は、三陸の島々で三泊から四泊の海浜合宿をするのが、わが生物部の恒例行事だった。その年は、金華山のそばにある網地島に決定! 女川から船に乗って約一時間、島に着いたわれわれは堤防…

第15話 落ちた!秘密基地

落ちた!秘密基地 「サンダーバード」はまだ始まっていなかったな~、たしか。でも、あの頃の男の子たちは物心付いたころからもう秘密基地の隊員にあこがれていた。家が狭かったせいもあるかもしれない。わが家も四人家族だったが、下が四畳半と六畳、二階が…

第14話 スネーク・ハンター

(→同級生佐々木保君より提供 「化女沼風景」門脇耕作) スネーク・ハンター わが高校の生物部は実に思い出深いクラブであった。昨日、山火事の話を書いたが、実は翌年もその場所でちょっとした事件があった。しかも、どういうわけか、またもアベックが出て…

第13話 「まろ」の顔

「まろ」の顔 中学三年生のとき、秋の運動会での出来事だった。あの頃の運動会は、応援合戦という出し物があって、クラスそれぞれ趣向を凝らしたものだった。そのなかでも第一は、応援席の後ろに立てる大きな大きな看板。ベニヤ板と材木を使って、横五メート…